先日の日曜日の夜、FIFAワールドカップ(以降W杯)日本対セネガル戦をご覧になった方々は、翌朝起きるのが大変つらかったのではないでしょうか。
世間ではW杯の影響で「にわかサッカーファン」が増えているようですから、今回は【部下と話せるサッカーと会計に関わる知識】をご紹介します。
目次
サッカー選手の資産価値はどのように扱う?
経営者および経営幹部を務めているサッカーファンなら、クラブチームの会計に興味を持つ方も多いのではないでしょうか。
例えば、クラブチームにとって最大の財産である選手の資産価値はどのように扱うのか……。皆様はご存じでしょうか?
以前、2006年のW杯ドイツ大会で日本代表主将だった宮本恒靖氏のクラブチームの財務や会計に関するとても面白いコラムが日経新聞に掲載されていました。
宮本氏は引退後に渡英し、国際サッカー連盟(FIFA)が運営する大学院「FIFAマスター」へ留学していました。ここでは財務会計も学びます。
財務諸表の一つである貸借対照表(以降B/S)が資産と負債で構成されるのは一般の企業と同じですが、サッカーの場合、ユースチームからトップチームに昇格した生え抜きの選手はB/Sに計上されないというのです。
その理由は『選手の金額が決まっていないから』。
サッカー選手の価値を判断する指標の一つとして移籍金があります。
かつて、クリスティアーノ・ロナウド選手がスペインのレアル・マドリードに移籍した際、元の所属先であるイングランドのマンチェスター・ユナイテッドに支払った約130億円(※当時のレート)という巨額の移籍金が話題となりました。
選手を獲得したクラブは、元の所属先に支払った移籍金の金額を資産としてB/Sに計上し、契約年数で減価償却していきます。欧州サッカー界の会計では、この考え方が主流のようです。
逆に、生え抜きの選手はどんなに活躍してスターになってもB/Sには計上されません。
宮本氏も同紙で触れていますが、かつてのイタリア代表の守備の要、パオロ・マルディーニ元選手はイタリア1部リーグ(セリエA)のACミランでプレイしていましたが、ユースからの生え抜き選手であったため、B/Sに計上されることはありませんでした。
一般企業における役員・社員の価値は?
では、一般企業では役員・社員の価値はどのようにあらわれるでしょうか?
ご存じの通りB/Sには何も記録されません。
サッカーのような移籍市場がないゆえ、その役員・社員の「金額(価値)」を客観的かつ正確にはかることができないためです。
役員・社員に支払った役員報酬や給与・労務費は、損益計算書(以降P/L)で費用の部に計上されます。
しかしこれは「御社の役員・社員には資産価値がない」ということではありません。
財務諸表では、人的資産価値は表せないのです。
- 30万円の給与で、ご自身の給与の3倍稼ぎ会社に貢献する社員
- 30万円の給与で、ご自身の給与分しか会社に貢献しない社員
P/L上は、どちらも各30万円の給与手当としか表示されません。
自明の理ながら、自身の給与の3倍稼ぐ社員を多く抱えた会社の方が成長・発展していくわけですから、その部分を資産計上して社員の価値として表したいものです。しかし、あらわせないのが現在の会計基準です。
財務諸表ではあらわせないからこそ人的資産価値を常に意識した経営を
だからこそ、財務諸表ではあらわせない人的資産価値を常に意識した経営をしなければなりません。
本来、資産として計上できる社員を、会計上は表示できなくとも、表示されるべき「人財」とみなして社員の資産価値の向上を図らなければならないのです。
サッカー選手を育成するように、皆さんの会社の社員も育成するのです。
……ということは、社長業は監督業ともいえるかもしれません。
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NBCコンサルタンツ株式会社
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