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厚生労働省『令和3年「雇用動向調査」』によると全業種平均の離職率は13.9%でした。
1. 宿泊業・飲食サービス業・・・・・・・・25.6%
2. 生活関連サービス業・娯楽業・・・・・・22.3%
3. サービス業(他に分類されないもの)・・18.7%
4. 教育・学習支援業・・・・・・・・・・・15.4%
5. 医療・福祉・・・・・・・・・・・・・・13.5%
6. 卸売業・小売業・・・・・・・・・・・・12.3%
7. 学術研究・専門技術サービス業・・・・・11.9%
8. 運輸業・郵便業・・・・・・・・・・・・11.5%
9. 不動産業・物品賃貸業・・・・・・・・・11.4%
10. 鉱業・採掘業・砂利採取業・・・・・・・10.0%
この結果を見て意外だったのは、サービス業の離職率が高いことでした。中小企業の経営者様から経営相談をいただく中で、経営課題の最上位項目に、必ずと言っていいほど出てくるのが「採用」です。特にここ一年、その傾向は顕著でした。
とりわけ弊社が「困られている」と感じていたのは「製造業」「建設業」など、いわゆる「モノづくりの業態」です。
今回のデータから、
- 比較的採用はできるが、離職率の高い……「サービス業」
- 採用に苦労しているが、離職率の低い……「モノづくりの業態」
という構図が見えてきました。
ベテラン(熟練工)が育つまで時間がかかる「モノづくりの業態」だからこそ、人を「採る」ことだけでなく「残す」ことにも経営リソースを割いてきた結果がこのデータに表れていると読み取れそうです。
この、人を「残す」という取り組みは、他業種・他業態においても今後の経営には重要事項と言えるでしょう。中小企業の経営において人を「残す」、また活性化を図るために何をすべきか。一例として、最近多くの成長企業が取り組んでいる「パーパス経営」をご紹介します。
パーパス(purpose)とは、直訳すると「目的」や「意図・意義」です。すなわち、企業としての存在意義や使命を明確にし、それを軸に経営するのが「パーパス経営」です。その取り組みの効果として以下の5点があげられます。
より具体的な共通目標の見える化、価値観の共有を行います。「自分たちが何にこだわっているか」「何に本気になれるのか」に共感することで、チームの一体感は増していきます。
その結果、チームワークが向上し、組織の生産性を高めることにつながります。
自社の取り組みが「誰を楽にしているのか」「誰の喜びに繋がっているのか」つまり「働く意義・目的」を明確にします。
また、お客様からの喜びの声やオススメの声を、Amazonのレコメンド機能のように社員に見える化していきます。結果、社員のモチベーションが向上し、自分の仕事に誇りを持ち、より一層の努力を惜しまない風土を醸成します。
中小企業は大企業に比べ、報酬や待遇の面での競争力を持つのは難しいですが、企業のパーパスに共感する人材は、その企業に長く留まる傾向にあります。
また価値観(労働観・経営観)が揃った組織になっていくことで、組織が一枚岩となり、決めた方向性に対して進むスピードが変わります。ひいては、企業にとって残ってほしい人材が残るような組織体制になります。
パーパスが明確で、ホームページやSNSなどの外部向け媒体に一貫して配信している企業は、そのビジョンに共感する優秀な人材を引き寄せやすいというデータがあります。
特に若い世代は、自分の働く企業が社会に何をもたらすのかということに大きな関心を持っています。
パーパスを明確にすることで、その方向性に基づいた意思決定が浸透しやすく、スムーズに組織全体の行動を一致させることができます。
働く人の価値観がますます多様化していくこれから、中小企業も「パーパス経営」で人を「採り」、「残し」、活性化させ、組織全体のパフォーマンスを高めることが重要になってくるでしょう。
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NBCコンサルタンツ株式会社
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