営業職として働く社員の離職率が高く、課題を感じている企業は、営業職の働き方や評価制度を見直すことで改善できる可能性があります。社員の定着率向上には、営業職が感じている負担や現状などを把握し、離職率が高い理由を理解することが大切です。
当記事では、営業職が離職してしまう原因と改善方法、また特に離職率が高くなりやすい業界について解説します。離職率を下げ、社員への定着率を上げるために当記事をぜひ参考にしてください。
目次
1.営業の離職率は高い?
厚生労働省の発表によると、2021年度の就業者全体に対する離職率は13.9%でした。職種単体での統計はないものの、一般に、営業職は平均よりも離職率が高い仕事とされています。
ここでは、まずは営業とはどのような業務を行う仕事なのか見ていきましょう。
1-1.営業職の仕事内容
営業職は、自社で扱う商品・サービスをお客様に紹介し、購入・契約してもらう仕事です。売って終わりではなく、営業戦略を立てたり、購入・契約後のお客様のアフターフォローを行ったりすることも営業職の大切な仕事です。
飛び込みで訪問して商材を売り込むイメージを持たれがちですが、実際の営業方法にはさまざまな種類があります。
- 法人営業
企業や組織を対象とする営業で、個人を対象とする場合に比べ契約金額や扱う規模が大きくなります。一般的に、商談の担当者と決済者は異なり、初回のアプローチから受注までの期間(リードタイム)が長引く傾向にあります。 - 個人営業
一般消費者や家庭を対象とする営業です。通常、営業をかける相手が購入者となり、法人営業に比べてリードタイムが短くなります。購入に結びつけるには営業相手に信頼されることが重要です。 - 新規営業
これまでに自社の商品やサービスを購入した経験のない、新規のお客様を獲得するために行う営業です。電話をかけたり直接訪問したりして商談の約束をとりつけ、新規顧客を開拓します。 - ルート営業
すでに取引のある顧客に対して行う営業です。定期的に連絡を取り、課題やニーズを確認したり新たな商品・サービスの情報を提供したりして、契約の継続や新たな購入につなげます。日頃から密にコミュニケーションを取り、営業先との信頼関係を築いておくことが大切です。
2.営業の離職率が高い理由は?
営業職は企業に直接利益をもたらすやりがいある仕事ではあるものの、きついと言われることが多くあります。ここでは、きついと言われる理由や辞める人が多い理由について解説します。
2-1.ノルマが厳しい
企業経営のためには、営業職が一定の売上を上げなければならず、企業の多くは、営業職に週単位や月単位で売上ノルマを課すことになります。
個々の営業社員のノルマを企業全体の売上目標から決めると、社員にとっては自分の能力以上に高い数値が設定されてしまいます。売上を重視するあまり高いノルマを課し続けると、社員は数字に追われ、常に大きなプレッシャーを感じながら働くことになります。いくら努力を重ねてもノルマを達成できなければ、自信を喪失し、精神的につらくなってしまうケースも見られます。
2-2.残業や休日出勤が多い
働き方改革によって労働環境が見直されつつある中でも、業務の性質上、営業職は残業や休日出勤が多い傾向にあります。たとえば、日中は得意先や顧客を訪問するなど外回りをし、定時後に帰社して報告書や資料を作成するケースは珍しくありません。
基本的に顧客の要望に合わせて動くため、定時後や休日に商談を行ったりフォローに出向いたりすることもあるかもしれません。心身ともに休みづらく、プライベートの時間が取れない点がきついと感じる一因です。
2-3.ストレスを感じやすい
営業職はストレスを感じる場面が多い職業です。特に、新規営業ではアプローチをかけた相手から失礼な態度を取られたり、強い言葉で拒絶されたりすることは珍しくありません。ルート営業では、既存顧客から厳しい要望を受けるケースも見られます。
また、ノルマがはっきりしているや業務量が多くなりやすい点も、大きなストレスを感じるポイントです。営業成績が上がらなければ周囲の目が気になり、無力感に苛まれる人もいます。
3.営業の離職率が高い業界は?
営業職の離職率は、どの業界でも同じように高いわけではありません。特に離職率が高いとされるのは以下の業界です。
- 不動産業界
不動産業界の営業は、住宅やマンションなど扱う商材が非常に高額です。リードタイムが長くなりやすく、なかなか成約にいたりません。テレアポや商談、顧客フォローのため休日が取りにくい点も、離職につながる要因です。 - 生命保険業界
生命保険の営業は新規開拓を続けていく必要がありますが、アプローチをかけても断られてしまい、アポを取るのも困難です。話を聞いてもらえても、相手はすでにほかの保険に加入しているケースも少なくありません。歩合制だと給料が安定しない点も、離職率の高さに関係しています。 - 訪問販売業
訪問販売業とは、個人のお客様の家を訪問して商材を売り込む営業手法です。急な訪問を警戒され、インターフォン越しに断られるなど話すら聞いてもらえないことも少なくありません。お客様の警戒を解いた上で、もともと興味のなかった商材を購入してもらう必要があり、ほかと比べても圧倒的に難易度が高い営業方法です。
4.営業の離職率を下げる方法
営業職の離職率の高さに悩んでいる企業は多いでしょう。離職率を下げるには、社員が退職する要因を把握し、解決策を講じることが大切です。ここでは、離職率を下げるために取り組むとよい対策を紹介します。
4-1.評価制度を見直す
まずは、現行の評価制度を見直す必要があります。社員が辞める原因の1つが評価制度への不満です。自分の働きやがんばりが正当に評価されていないと感じてしまうと、意欲を持って働き続けることは難しくなります。
評価制度の見直しにあたっては、社員にヒアリングして状況を正確に把握することが不可欠です。現状を分析して、どのような課題があり、何を改善すべきかを理解しましょう。
ヒアリングの結果をもとに評価制度を見直したら、研修や説明会などを実施して、評価する側である上司にも評価される側の部下にも周知を徹底します。
4-2.教育体制を見直す
社内の教育体制を見直すことも不可欠です。必要なスキルやノウハウが身についていない営業社員は、業務がうまくこなせず、結果もなかなか出せません。不足している営業スキルが習得でき、伸ばせるような教育体制を構築することが必要です。
教育体制の構築にあたっては、現場の上司や社員から十分に話を聞き、現状の課題や教育ニーズを把握する必要があります。課題やニーズが掴めたら、基本方針の策定です。求める営業社員像を明確にし、経営理念や教育の基本方針に沿って教育体系を設計します。
企業サイドのニーズだけでなく社員のニーズにも応える内容になっているかどうかも意識しましょう。
4-3.労働時間をしっかり管理する
営業社員の長時間労働や休日出勤が常態化している企業は少なくありません。ワークライフバランスが取れない職場は社員の心身の疲労を招き、離職につながります。企業は実態を把握し、労働時間を適切に管理する必要があります。
ただし、自己申告に任せていては、外回りの多い営業社員の労働時間を正しく管理することはできません。そこで、スマホやタブレットで利用できるタイムレコーダーを導入するのも1つの方法です。
取引先や顧客に着いた時点を始業時間、業務が終了した次点を終業時間として打刻するようにすれば、労働時間を管理できます。
実際の労働時間に関係なく、一定の時間働いたとみなす「事業所外みなし労働時間制」を活用する方法もあります。ただし、みなし労働時間と実際に労働した時間とがかけ離れていると社員の不満につながるため、注意しましょう。
まとめ
自社製品・サービスの売り込みを行い、契約・購入してもらうことを仕事とする営業職は、ノルマの厳しさや忙しさにより、離職を考える社員が多いと言われています。ノルマへのプレッシャーや営業先との関係など、ストレスとなる要因が複数あるのが原因です。
営業職の離職率を下げ、社員を定着させるには社内の制度を見直す必要があります。特に評価制度・教育制度に手を入れ、社員がしっかりと成果を出せるよう育てた上で、努力を正しく評価できる環境を整えることが大切です。
(令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成)
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