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2024年3月、日本銀行の「マイナス金利政策」が解除されることが決まりました。
日本銀行による利上げは2007年2月以来およそ17年ぶりということで、経済紙・一般紙を含め紙上を賑わせたためご存知の方も多いと思います。
よく混同されがちですが、「マイナス金利政策」は2006年の金利自由化にともない変更された「公定歩合」とは異なり、日本銀行当座預金に適用する金利を0.1%とすることで、金融機関同士が短期市場で資金をやり取りする際の金利「無担保コールレート」の金利幅を調整するものになります。
これにより、預金が積み上がると損をする環境を生み出し、金融機関が世の中にお金を回すよう促す政策です。
黒田総裁時代の2016年1月、歴史上はじめてとなるマイナス金利施策が導入されたことで、企業への貸出金利や住宅ローンの金利は大幅に低下、中小企業への融資残高は増加し、個人住宅市場に一定の需要を生み出しました。
しかし、デフレ脱却を目指して導入されたものの物価上昇にはつながらず「金融機関の収益圧迫」「年金基金の運用利回り低下」といった副作用も表面化しました。
世界的な物価上昇を背景に利上げへの転換が進む中、デフレに悩まされていた日本にとって、世界から取り残された独特の施策となっていました。
年月 | 金利の変遷 |
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1999年2月 | 無担保コールレートの金利を史上最低の0.15%に。 当時の速水総裁が「ゼロでも良い」と発言したことから (0%ではないのですが)「ゼロ金利政策」と呼ばれるように |
2000年8月 | ゼロ金利政策を解除し、0.25%の利上げ。 |
2001年2月 | アメリカのITバブル崩壊の影響で利下げ(0.15%)。 その後日本銀行は、利上げを行った後に景気が低迷し、 政策の修正を迫られるという歴史を繰り返していくことになります。 |
2006年7月 | ゼロ金利政策を解除して金利を0.25%に引き上げ、 翌2007年2月には追加の利上げ(0.50%)。 |
2008年12月 | リーマンショックの影響で利下げ(0.10%)を決定。 |
そして今回、日本銀行は2007年以来、17年ぶりとなる利上げに踏み切ったのです。
しかし、個人消費の弱さや企業設備投資の伸び悩みも見られる中、今後、日本銀行の思惑通りに物価や景気が推移していくのかというと懐疑的にならざるを得ません。
振り返ってみると、金融政策とはいえ日本は失われた30年を通し、世界的に見ても異常ともいえる低金利で推移してきました。
企業にとっては、コストが低く資金調達が容易な環境であったといえます。
本来であれば、それが追い風になるはずが、適正な経営循環が行われていないために然るべき成長が促されてこなかったことが失われた30年につながっています。
資金調達にはコスト(利息)がともなうことは経営上必然であり、事業計画を立てる上で今後ますますキャッシュフローの把握は重要性を増していくことでしょう。
変化の激しい経営環境の中、経営の羅針盤としての数字の把握にしっかりと取り組まれることを推奨いたします。
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NBC税理士法人
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