近年、「従業員エンゲージメント」という考え方が広まってきており、従業員エンゲージメントを高める重要性が説かれています。従業員エンゲージメントは、モチベーションや従業員満足度とはまた違った意味合いを持っており、企業の業績や離職率にも影響を及ぼしかねません。
当記事では従業員エンゲージメントについて、構成する要素と向上させるメリットについて詳しく解説します。他の言葉との違いを学び、従業員エンゲージメントを高めるための参考にしてください。
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目次
1.従業員エンゲージメントとは？
従業員エンゲージメントとは、会社に対する従業員の姿勢や意欲を意味します。会社が1つの目標に向かって成長する上で、従業員エンゲージメントは非常に大切です。ここでは、従業員エンゲージメントについて理解を深めるために、3つの構成要素や日本の従業員エンゲージメントレベルなどの基礎知識を解説します。
1-1.従業員エンゲージメントを構成する3つの要素
従業員エンゲージメントは、「理解度」「共感度」「行動意欲」の3つの要素から構成されます。各要素を高めることで、従業員エンゲージメントが高まります。
理解度
企業の理念や戦略を従業員が理解できていなければ、よい結果には結びつきません。同じゴールに向かって前進できるように、企業が理念やビジョンを明確に従業員に示し、理解度を高めることが重要です。
共感度
従業員が組織の一員であることに誇りを持ち、企業の理念やチームメンバーに対して愛着を感じているかどうかも大切です。円滑な社内コミュニケーションやフォロー体制の構築を行うと、従業員の共感度が高まり、企業として一体感が生まれます。
行動意欲
行動意欲とは、従業員が企業全体のメリットを考えた上で、自分の役割を理解して、自主的な行動ができることです。自ら企業のためにできることを考え実行し、周囲からの適切な評価やフィードバックを受けて達成感を味わうと、企業に対する愛社精神はさらに強まります。
1-2.日本の従業員エンゲージメントレベルは？
日本で仕事に対する熱意があふれる従業員の割合は、わずか6％とかなり低い水準です。一方で、アメリカ・カナダでは31％と日本の約6倍であり、大きな差があります。
また、世界の従業員エンゲージメントの平均水準が15%なのに対し、日本は9%下回っているのが現状です。さらに、日本は世界139か国中132位という低い順位のため、従業員エンゲージメントの必要性を感じて施策を行う日本企業も増えています。
自社の従業員の意識を変えるためには、従業員エンゲージメントを測ることから始める必要があります。問題点を洗い出した上で向上施策を打ち出し、改善する取り組みが大切です。
2.従業員エンゲージメントと混合されやすい言葉
従業員エンゲージメントとよく似た言葉として、下記のようなものがあります。
- モチベーション
- 従業員満足度
- ロイヤリティ（忠誠心）
- コミットメント
- ワークエンゲージメント
意味を混同しやすい言葉ですが、実は同じではありません。ここでは、それぞれの言葉と従業員エンゲージメントとの違いを解説します。
2-1.モチベーション
モチベーションとは、ビジョンや行動に対し、前向きに取り組む際の動機づけにあたる言葉です。企業では「上司に評価されたい」「昇進したい」といった思いがモチベーションにつながります。
エンゲージメントとモチベーションは、どちらもポジティブな意識がかかわっています。異なるのは、モチベーションが個々の動機であることに対し、従業員エンゲージメントは、周囲との関係性の中で生じる状況であるという点です。
2-2.従業員満足度
従業員満足度とは、仕事内容や職場環境、社内の人間関係、給与や報酬などの労働条件に対し、従業員がどの程度満足しているかを表す目安として用いられる言葉です。具体例として、以下のような状態は従業員満足度が高いと言えます。
- 育児休暇や生理休暇が取りやすい
- 自分が希望した仕事に携われている
従業員エンゲージメントとの違いは、満足度に焦点が当てられている点であり、従業員の姿勢や意欲は関係しません。
2-3.ロイヤリティ（loyalty：忠誠心）
ロイヤリティとは、従業員が会社に対して持つ忠誠心であり、会社のほうが優位な立場であるという意味合いを含んでいます。従業員は会社に奉仕する立場であり、主従関係にあります。
ロイヤリティの観点は会社が主であることに対し、従業員エンゲージメントは従業員と会社が対等な関係性であることが特徴です。同時に、従業員は忠誠心ではなく、会社に愛着を抱いている状況で、自分が会社とともに成長していくという意識があります。
2-4.コミットメント
組織の中でのコミットメントは、会社に対しての帰属意識を意味しており、仕事に責任を持って関与している状態です。コミットメントには、以下の2通りあります。
- 情緒的コミットメント：職場の雰囲気が好きで働き続けたいなど、感情から生じる
- 功利的コミットメント：給与や条件に満足しているなど、現実的な利点から生じる
コミットメントは、企業側が従業員に与える責任を伴う確約であるのに対し、従業員エンゲージメントは従業員が自ら率先して取り組もうとする状況です。
2-5.ワークエンゲージメント
ワークエンゲージメントは、仕事に対する従業員の意欲を示す言葉です。具体的には、以下のような心理状態を言います。
- 仕事が面白くてたまらない
- 企画作りに没頭している
- 新しいプロジェクトを成功させたい
同じエンゲージメントというポジティブな意識でも、ワークエンゲージメントと従業員エンゲージメントでは、意欲を向ける対象範囲が異なります。前者は仕事に対する熱意や姿勢のみを指しますが、後者の概念は、仕事以外の会社や仲間に対する認知や感情等も含まれることが特徴です。
3.従業員エンゲージメントを向上させるメリットは？
従業員エンゲージメントを高めると、企業にとって次のようなメリットがあります。
- 顧客満足度が向上
- 離職率の低下
- 会社の業績アップ
- 従業員のモチベーションアップ
ここでは、従業員エンゲージメントが企業にとって重視される理由やメリットについて、データをもとに詳しく解説します。
3-1.顧客満足度の向上につながる
顧客からの評価は、企業の信頼感にもつながる重要な要素の1つであり、よい評価をもらうためには商品やサービスの質を高く保つ必要があります。経済産業省が発表した研究データでは、従業員エンゲージメントが高い企業は、そうでない企業に比べると、品質上の欠陥が40％も低くなっています。
自発的に熱意を持って自分の役割をこなす従業員が多い企業では、仕事のクオリティが上がり、結果的に顧客満足度の向上につながることがメリットです。
3-2.離職率が下がる
離職率が高いと採用や人材育成にかかるコストが上がる他、仕事のノウハウも溜まりにくく、企業の成長にとってもよいこととは言えません。一方で、離職率が低いと、優秀な人材が流出しにくく、リーダーシップの育成にもつながります。
従業員エンゲージメントが高い企業は、愛社精神が生まれやすいため、離職率も低くなることが特徴です。
3-3.会社の業績が上がる
顧客満足度の向上や離職率の低下は、会社が業績を上げるための課題となる要素です。加えて、近年従業員エンゲージメントが重視される理由には、業績との相関関係がデータとして確認されていることが挙げられます。従業員エンゲージメントスコアが高い企業ほど、営業利益率や業務効率が上がることが分かっています。
3-4.従業員のモチベーションが上がる
企業への愛着がないと、従業員は与えられた仕事を機械的にこなすのみで、仕事に対する意欲がわきません。一方で、従業員エンゲージメントが高い場合は、従業員が自らの業務を自主的に行い、価値を見出だせるようになります。職場全体の雰囲気も活発になり、従業員のモチベーションが上がることも大きなメリットです。
まとめ
従業員エンゲージメントとは、従業員がどの程度意欲を持って企業に貢献しているかを示した言葉であり、企業への理解度や共感度、行動意欲によって構成されます。従業員エンゲージメントを高めると、離職率の低下や業績の向上など、さまざまなメリットが存在します。
日本の従業員エンゲージメントは決して高い値ではありません。企業が理念をしっかりと示し、仕事を進める上でのフォロー体制を整えるなどの工夫を行い、従業員エンゲージメントを高めていくことが必要です。
その把握方法・活かし方はわかりにくく、経営者にとっては高度な命題となっています。
本資料は、エンゲージメントの必要性から把握方法までを1冊にまとめました。
従業員エンゲージメントが業績に与えている影響も、実在する会社の実例を挙げてご説明します。
（令和２年度第３次補正事業再構築補助金により作成）
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