加速度的に進む世の中のキャッシュレス化。
特に小売・サービス業においては、決済手段に電子マネーやクレジットカードを導入されている企業も少なくないことと思います。
今回は“現金決済好き”な日本人にキャッシュレスは浸透するのか?という観点から、貨幣の価値について考えてみたいと思います。
目次
貨幣とは?
かつて貨幣は、本位貨幣(本位金・銀貨)を指す言葉であり、貨幣そのものの価値が実質価値と等価である「正貨」といわれる物でした。
その後、1971年のニクソン・ショックによって本位貨幣制度は崩壊し、管理通貨制度・変動相場制へと移行していきます。そして、貨幣の信用の源泉は発行する国家へと変遷していきました。
「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」によれば
『通貨とは、貨幣及び日本銀行法の規定により日本銀行が発行する銀行券をいう。』(同法2条3項)
とされ、また
『貨幣の種類は、五百円、百円、五十円、十円、五円及び一円の六種類とする。』(同法5条1項)
と規定されていることから、硬貨が貨幣であり、紙幣は正確には日本銀行券ということになります。
そして同法第7条により、貨幣は額面価格の20倍までに限り、強制通用が認められています。すなわち、支払いを受ける側は、貨幣の種類ごとに20枚までであれば受け取りを拒むことはできません。
例えば、12,000円の買い物をした際は、五百円硬貨と百円硬貨の各20枚で支払うことが認められています。
(21枚以上であっても、支払いを受ける側が拒否せず受け取るのは自由)
小銭入れが重くならないように一生懸命財布から硬貨を出して支払いをしても、21枚以上は断わられても仕方ない、ということになります。
このように、持ち歩くことに煩わしさを感じる場合もありますが、貨幣には以下のような重要な機能があります。
貨幣の重要な機能
■価値の尺度機能
貨幣は、計量可能なモノ(財)の交換価値を客観的にあらわす尺度となります。
これによって異なるモノの価値を、同一の貨幣において比較ないし計算することができるのです。
例えば、書籍20冊の価値とメロン1個の価値は、それぞれ貨幣で何枚分……といった比較が可能になり、価格を計算することができます。
■決済・交換機能
計量可能なモノを渡し、責務を決済する機能をいいます。共通に認められた価値である貨幣を介することで取引をスムーズに行うことができますが、貨幣を介さない等価交換においては、取引が成立する条件として、相手が自分の欲しいモノを持っていることと同時に、自分が相手の欲しいモノを持っていることが必要となってしまいます。
■価値の蓄蔵機能
例えば、モノとしてのリンゴ1個は腐敗すれば無くなってしまいますが、貨幣に換えておけば、将来新鮮なリンゴ1個を入手できる価値を蓄えておくことができます。「リンゴ1個の価値」を蓄蔵できるわけです。
ただし、自由な取引のもとでは通貨価値ないし物価変動により、貨幣で入手できるモノの量は増減することがあります。
仮想通貨は貨幣?
以前のメルマガでも触れた仮想通貨は、貨幣としての機能を有しています。
そして、その信用の源泉はブロックチェーンといわれる技術により成立しているものです。
昔から現物志向の強い日本人が、電子マネーや仮想通貨を主要な貨幣として使用していくかどうかは未知数ですが、貨幣が長い歴史の中でその形を変えてきたとしても、そのものの本質は同じなのです。
経営においてもそうですが、本質を見定め、必要に応じて使い分けることは何事においても肝要といえます。
ちなみに、日本銀行券の流通量は100兆円を超え、日本のGDP約500兆円の20%に相当します。
(金融施策としてのマネーサプライ増加によるインフレ誘導もありますが。)
国際決済銀行が2016年に公表した統計によればユーロ圏10.6%、米国7.9%、英国3.7%ですから、他の主要国と比べても先進国の中では断トツです。
私もご多分に漏れず、現金決済に安心感を抱くタイプですが、日本人が現金を持たずに生活する日が来るのは、まだまだ先のことになりそうです。
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この記事の著者
NBC税理士法人
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