以前も事業承継民事信託の事例:続・社長/山田太郎の場合についてお伝えしましたが、
最近、特に家族信託に関するご相談が増えてきております。
そこで今回は、改めて家族信託についてお伝えいたします。
目次
「家族信託」とは
家族信託とは、信託という言葉のとおり「財産の管理や処分を信頼できる家族に託す制度」です。
この家族信託制度を利用することで、従来の法制度下で起こっていたさまざまな相続トラブルを、解決・未然防止することができます。
「家族信託」のメリット
遺言や後見人制度ではできないことができる!
相続対策と聞くと、まず「遺言作成」をイメージされる方も多いのではないでしょうか?
確かに、遺言を作成しておけば、自分が死亡した後の財産の行く先を決めておくことができますが、遺言で定められるのは自分が死亡した時にとどまります。
例えば「自分の財産をまずは妻に相続させ(一次相続)、妻が亡くなったら次は弟に渡したい(二次相続)。」という場合、
遺言で定められるのは、一次相続先までであり、二次相続まではまかなえないのです。
一方、家族信託制度を活用すると、この二次相続先、三次相続先までを予め定めておくことができます。
また、被相続人が認知症になってしまった場合の財産管理方法として「成年後見」という制度についても耳にされたことがあるかもしれません。
認知症となった被相続人に変わり、後見人が財産を管理する制度ですが、後見人はあくまでも「被相続人の財産を守る」ことが目的であり、その財産の積極的な活用や運用ができません。
※社長が認知症になった場合の対処方法については「もし社長が認知症になったら」で解説しています
例えば、被相続人が所有していたアパートが老朽化してしまって、住人の方々が困っている……などという時も、後見人の立場ではそのアパートの修繕などができません。
このような場合も、家族信託であれば積極的な財産運用ができるため、アパートの大規模修繕も建て替えも託された側で進めることができるのです。
家族信託は事業承継にも役立つ!
仮に「後継者は決まっているが、まだ経営の第一線から退くつもりはない」とあなたがお考えだとします。
後継者の育成状況などを見て、適切な時期に事業承継を行うことがベストですが、実際には株式承継の税金を考慮し承継のタイミングを決めざるを得ません。
ところが、この問題も家族信託を活用すれば解決できます。
家族信託で株式を信託する場合「経営権」と「財産的価値」を分けることができるのです。
つまり、経営そのものは「後継者に安心して任せられる」と思える段階まで引き続きご自身で行い、株式は別途、株価を見ながら適切なタイミングで承継するという扱いが可能になるのです。
遺留分対策にも使える!
相続財産が不動産などで収益性がある場合、遺留分での揉め事が多いのも「相続あるある」ですが、これも家族信託を活用すると未然にその争いを防げます。
先の事業承継の場合のように、家族信託では「管理」と「受益」を分けることができますので、管理や処分は信頼できる一人に運用を託し、収益は法定相続割合に応じて各相続人に分配とすれば、迅速かつ効率的に切り盛りできますし、受益権を複数に分配することで、揉め事も回避できます。
まとめ
いかがでしょうか?
昨今の世情は、誰もが自分の足元や行く末を改めて見直してみるような大きな節目とも言えます。
このような時だからこそ、決して後ろ向きなものではなく、先の憂いを今から一つでも無くしておく攻めの一手として、家族信託という制度の活用を検討してみていただければと思います。
次回は、家族信託の落とし穴について解説します。
参考書籍:
『司法書士・税理士・行政書士が教える絶対に知らないとヤバイ!
家族信託の手続きの進め方』
著:赤津寛紀・柴崎貴子・中山浩志/彩図社
https://amzn.to/31ts8m7
この記事の著者
NBC司法書士事務所
西東京市で相続と会社設立で実績のある司法書士です。相続と会社設立以外でも、ワンルームマンションを使った資産運用の提案、遺言・葬儀生前予約信託、保険を活用した相続トラブルの予防など、お金と法律に関することなら、何でも対応可能です。